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2023年をふりかえって

今年も残りわずかとなりました。

2023年、皆さんどんな年でしたか?

 

森の王者である熊があちこちに出没し、

一方、イスラエルでは一神教同士が争っている。

勝手に私は八百万の神々からの啓示だとこじつけて、

今年の漢字は「熊」でしょうと予測してたのですが、

違いましたねー。

 

熊ではないのですが、

今年は鹿にお世話になった年でした。

 

3月、Bunkamura Wall Galleryに展示後

10月までは新たな製作にとりかかりました。

年明けすぐにコンセプトを練り始めたものの、

素材に納得がいかず悩んでいた初夏、

思いがけぬ出会いに恵まれました。

それが「鹿革」です。

今年の一番の収穫間違いなし。

 

姫路は皮革産業の盛んな場所として有名ですが、

皆さん「白なめし革」ってご存知ですか?

白なめし革は、その名の如く白いんです。

塩と菜種油といった天然素材のみを利用した、

播磨の地に古くから伝わる鞣し製法です。

水と塩と菜種油しか使わないでなめすなんて、

可能なの???

避けては通れない革にはつきものの

「大量の薬品、大量の水の消費」の問題をクリアしているではないか!

それは凄いことだ!

 

古来の製法を現代に受け継ぎ鞣しを行っているという、

「新敏製革所」の新田眞大(まとも)さんに早速連絡をとり、

姫路を訪問しました。

新田さんは突然の訪問も快く迎えてくださり、

白なめしの作られる工程や特徴について

詳しく丁寧にお話を聞かせてくださいました。

 

訪問先の高木地区には綺麗な市川が流れており、

昔から皮革産業が栄えていたとのこと。

川沿いの天井高で広々とした工場内では、

革を洗うための(?)大きな木のたらいが

グルグルと音を立てて回転しています。

工場内は川からの空気のせいかキリッと澄んでいて、

革本来のミルキーな香りが心を落ち着かせてくれました。

化学薬品のにおいはしませんでした。

川の水と風、豊富な赤穂の塩となたね油。

土地の自然が育んだ産物はこんなにも優しい香りがするのか。

訪問時には完成した革が工場内に積んであり、

運良く手に取って拝見させていただくことができました。

日本鹿、猪、牛、豚、すべて白鞣しでした。

(タンニン鞣しの革もありました。)

この味わい深き表情よ!

革本来の美しさがあるではないかああーーー。

手に取った瞬間にこれだと確信しました。

美しいエゾシカの白鞣し革を、

お願いして購入させていただきました。

 

丁寧になめされた革のミルキーな香りと

肌が荒れる感覚ゼロの肌触り。

「白なめし革はいってみれば純粋なコラーゲンの塊だ」

その言葉忘れられません。

 

新田さんからは白鞣し愛と自信が滲み出ており、

現代の革の有りよう、環境のこと、革の凄さ、

あらゆることを教えていただきました。

なんでも、弟子はとらないとのこと、

でも新田さんを尋ねに日本全国から若者がやってくるそうです。

 

私はエゾシカの白鞣し革を連れて帰り、

すぐに製作に取り掛かりました。

10月末には完成!

お披露目するのはまだ先となりますが、

いつか展示する機会があれば嬉しいです。

 

次なる作品も白なめし革を使うこととなり、

実は、11月に再び姫路訪問したところ。

白鞣しストーリはもう少し続きそうです。

 

*姫路の白なめしについては、
ぜひこちらのサイトをご覧ください。
https://www.shironameshileather.com/