[ART WATCH] アンゼルム・キーファー《ソラリス展》二条城をみて
二条城のアンゼルム・キーファー《ソラリス展》を観た。
会場に足を踏み入れてまず感じたのは、絵の持つ“色”の吸引力。
二条城内の展示空間ととても調和が取れていて、
入り口から心揺さぶられた。
絵の具、鉱物、土、水、風、そして感情のようなものまでが混ざり合った画面は、
曇り空の自然光が差し込む薄暗い二条城の空間演出も相まって、
一見激しい筆のタッチであっても、
全体としては均整が取れており、不思議な静けさがあった。
記憶が眠っている音が、
くるはずもないのに、
どこかでかすかに聞こえて。。。
そんな印象だった。
私は普段、怒りや破壊を前面に出すような作品には、
どちらかというと距離を感じるが、
キーファーの作品は、そうした感情を深く練り込み、
ある種の落ち着きや秩序に昇華させているように思えた。
歴史や記憶を掘り下げてたどり着くものなのか?
静かな力強さ。
この感覚は何ものなんだろう?
激しい筆致で塗り重ねられた絵の具は混沌としているのに、
数歩後ろに下がるとたちまち、
麦畑や荒涼とした大地が浮かび上がり、
作品はまた違った表情を見せる。
そこには、落ち着きの中にイメージを掻き立てる
静かな動きがある。
重ねられた絵の具の中から現れる金色の粒子を、
緑青色やミントグリーンがやわらかく引き立てていた。
絵の中に込められたものは重いはずなのに、
色彩がそれを支え、調和させ、
かすかに平穏のようなものを感じさせる。
ただ、「破壊や記憶の先に希望がある」
といった表現では、おそらくない。
むしろ、負の記憶でさえ、
残酷なまでに美しいことがあるのだと──
そう胸に刻めと言われているような気がした。
色彩に没入していくほどに、
「無」に近づいていける。(かも...)
そのこと自体が、
私にとってはひとつの希望のように思えた。