川村記念美術館とアメリア・アレナス ②
とある本がきっかけでした。
アメリア・アレナス著「なぜ、これがアートなの?」(淡交社)
元MoMAの職員だった著者が
川村記念美術館の所蔵作品などの美術解説をしています。
「なぜ、これがアートなの?」と子供に問いかけ
「あなたってどんな人?何を感じているの?」
と人々に深くて新鮮な世界をもたらしてきた著者の
「アートを語る」言葉の数々がとても素敵なのです。
この本を携えて美術館を巡れば、
立体的に多面的に絵画を理解することができます。
次第に自分の中の階段を一歩ずつ降りていく経験を
誰もが味わうのではないかと思います。
自分の視点、ひいては自分自身を知るきっかけをくれるそんな本です。
例えばこんな具合です。
アド・ラインハートの『抽象絵画』(1960-1966)
(ぜひ検索してみてください。ちょっとびっくりするかも)
これを読んだら
アド・ラインハートの『抽象絵画』の前で
じっくりと時間を費やさずにはいられなくなりますよね。
他にも、
フランク・ステラの『トムリンソン・コート・パーク』(1959年)
(こちらも検索してみてください。検索する前に絵画を想像してから…)
ステラの企みを知り、思わず自分を客観視しました。
真っ黒に塗りつぶされた一枚の絵や
奇妙な幾何学模様の描かれた面が
急に作家の想いの詰まった
このようなアートの言葉の積み重ねで
多面的なモノの見方を
この本にはアメリアの言葉だけが詰まっていますが、
きっと彼女はこう言ってる気がします。
「あなたはどう感じているの?」と。
特にとっつきにくい現代アートも丁寧に紐解くと、
アートって
人智を超えた崇高なものであって欲しいと期待するものだけど、
実は皆の心や体の中に
すでにあるものなのだとつくづく感じます。
未知で壮大なアートの海上にそっと針糸を垂らす
「言葉」は釣り竿のような役目を果たしているのだと
尊い言葉の存在をこの本は教えてくれました。
最後にアメリアが吉原治良の『作品』(1962年)
と日本の「書」について著した
このくだりがとても好きだったのでご紹介します。
アメリア・アレナスの言葉を日本語訳された
福のり子さんの技も
素晴らしいなと感動してます。
私がご紹介した一部だけでは到底伝えきれない
アメリアの秀逸な言葉の数々。
時代背景や現代アートの歴史的系譜も
盛り込んだ素晴らしい本
ぜひお手に取って読んでみてください。
そして佐倉市の川村記念美術館にお出かけください。
本を持って再び美術館に行きたくなりました。