カート
0

【ART WATCH】DEEP LOOKING & INSIDE

INSIDE

ネトフリの映画『Inside』を観ました。
(ネタバレ含みますのでご注意を!)

ウィレム・デフォー主演ときたら
興味を持たずにはいられませんよね。
本作は美術品泥棒の主人公が
New Yorkのとあるペントハウスに盗み入って
閉じ込められてしまうというお話。

デフォー演じるネモは、
ただの泥棒じゃなく、
本当は“挫折した画家”だったのではないか
そんな風に解釈してみたくなりました。

彼が「火事のときに持ち出す3つのもの」の中で、
最も大切にしたのは「スケッチブック」
だとすると、画家としては挫折し
その悔しさと欲望を抱えながら
他人の美術品を盗むようになったのではないかと想像します。

だけどアートの神様は、そんな彼を
「閉ざされた豪邸」に放り込むんですよね。
どうあがいても脱出不可能な
檻と化した家の中で
命をかけて家具や壁をぶち壊し
それがやがて彼自身の“作品”へと変わっていく。

部屋のど真ん中に築かれたあの建造物は、
おいおい、アートじゃん‼️

まるで太古の人間が洞窟の壁に絵を描くほどの
脇目もくれないエネルギーに満ち満ちている。

生き延びるために描かれた祈りや、
積み上げられた建造物は、
結果として「アートの始まり」になっている。

映画の最後にはこんな言葉が響きます。
「エネルギーこそが永遠の歓喜である。
ひとつの思いが満ちてひろがる。」
とても宗教的で深遠な言葉です。
(ウィリアム・ブレイクの言葉らしい)

私も創作するとき、
内なるエネルギーを感じる瞬間がありますが、
ネモのように生死を彷徨うほどに激しく、
突き抜けるエネルギーなんて、
どうしたら得られるのでしょうね…。

そして後で知って驚いたのは、
あの壁画やオブジェが
本当にデフォー本人の
即興で作られていたという事実!
俳優でありながら、
もはや完全にアーティストです。
凄すぎる――役者魂も、破壊力も、創造力も。

New Yorkの現代アートの
インスタレーションでも観に行ったような、
そんな映画でした。

DEEP LOOKING RADIO

最近お気に入りのポッドキャスト番組
DEEP LOOKING RADIO

そのRoger McDonaldさんの提唱する
DEEP LOOKING」と
映画の内容が重なったことも
相乗効果でした。
(アート好きの方には面白いので
ぜひご拝聴くださいね。)

彼は時間をかけた深いアート鑑賞を
提唱していて、
さまざまな角度からのアプローチが面白いのと、
論理的思考の言葉選びが素晴らしく好きです。

著書『DEEP LOOKING
想像力を蘇らせる深い観察のガイド』
を是非ご拝読ください!

やや過激で激しいとはいえ
ネモの密室こそ、
DEEP LOOKING
に相応しい空間なのでは?

作品をただ眺めるのではなく、
じっと観察し、内側へ潜り込む。
アートは異界への窓にもなる
それは現代人にこそ欠かせない営み
かもしれませんね。

私自身、ヨガや瞑想に救われてきましたが、
これは「Inside」体験。

外の世界を止めて、
自分の内側を深く観る。
ネモの閉ざされた空間と同じように、
制限の中にこそ
本当の想像力が芽生えるのかも。

自分の内側を激しく抉ることが
新しい創造の第一歩なのだと思います。

罰なのか召喚なのか。
私たちは惑うけれど、
どっちみち創らねばならぬのだ。

最後に映画の中で
一番印象的だったのは、
「創造には破壊が必要だ」
この言葉に尽きる。